看民工学コラム㉓ ケアから社会を変える ― CHANGE、第2章へ
新年あけましておめでとうございます。
日本は世界に類を見ないスピードで少子高齢化が進み、医療や介護の現場では深刻な人手不足が課題となっています。こうした中で、「医工看共創が先導するレジリエント健康長寿社会の構築」を目指して始まったのが、文部科学省・JSTの共創プログラム「CHANGE」です。代表機関を務める川崎市産業振興財団とナノ医療イノベーションセンター(iCONM)は、大学や企業、行政、市民が垣根を越えてつながり、未来のケアをデザインする活動を続けています。
CHANGEは、10年プロジェクトとして採択されてからすでに4年目を迎え、2026年度からはいよいよ第2期に入ります。これまでの第1期では、医療・看護・工学など多様な分野の専門家が連携し、ケアの現場から生まれる課題に科学技術で応えるための「共創の基盤づくり」を進めてきました。これからの第2期では、研究開発の成果を社会に広く展開し、「川崎発のケアイノベーション」として国内外に発信していくことを目指します。
医療技術は日々進化していますが、ケアの現場では今なお人の力に支えられています。私たちはこの分野に工学の知恵を取り入れ、「Nursing Engineering(ナーシング・エンジニアリング)」という新しい概念を掲げています。誰もが安心してケアを受け、そしてケアを担える社会の実現に向けて、使いやすい道具やデジタル技術、データを活用した見守りシステムなど、次世代のケア技術の開発を進めています。
プロジェクトから派生して設立され、昨年4月から本格的に活動を始めた「かわさきケアデザインコンソーシアム(ケアさき)」では、看護現場での課題抽出や実証を通じて、研究成果をいち早く社会に届ける仕組みを整えています。iCONMには国内外から多様な研究者が集まり、外国籍研究者が4割、女性比率が3割という多様性豊かな環境の中で、新しい発想と技術が次々と生まれています。また、東京大学など大学でも、工学的な視点から高齢者ケアに挑む教育や学生有志の自主活動が始まり、若い世代にも「ケアする力」を育む動きが広がっています。
誰もがケアされ、ケアする社会へ。科学と人のぬくもりが響き合う街・川崎から、次のステージへ。CHANGEプロジェクトは、これからも地域とともに、未来の健康長寿社会を共創してまいります。引き続き、CHANGEプロジェクトへのご理解とご協力をお願いいたします。
一木隆範・博士(工学)
プロジェクトCHANGEリーダー、川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター・研究統括、東京大学大学院工学系研究科・教授
