現在、血液検査をはじめ、医療機関に出向かなくてはできない検査は少なくありません。研究開発課題1では、そういった検査をできる限り在宅でできるようダウンサイジングや非侵襲的手法(例えば採血に代わる生化学的検査など)について研究を進めます。さらには家庭で普通に日常生活を過ごす間に、居室に設置されたセンサーが健康状態をチェックできる仕組みを開発します。
患者の病状にあわせた投薬管理は臨床薬学上重要ですが、在宅においてそれを行うことは容易でありません。体液中にある特定のバイオマーカーを測定すると同時に、その値に応じた適切な量で薬剤を自動投与できる貼付式の薬剤血中濃度管理装置を開発することで、在宅における投薬管理の適正化を図ります。また吸入や貼付で投薬可能なバイオ医薬品製剤を開発し、医療機関に出向かなくても在宅医療で使用できるようにします。
老化の予兆に関する研究が近年活発に行われており、そのメカニズムが次第に解明されつつあります。これらの知見を基に、体内でのそのような予兆を早期に発見する診断法を開発します。また、体内に発生した老化細胞をターゲットとした治療技術やワクチンを開発し、老化の進行を遅らせることで健康寿命の延伸に繋げます。
病院とは異なり、在宅医療では看護師が24時間患者に寄り添うことはできません。看護師に代わり家族を含む一般市民が看護に携わるための知識と理解力(ケアリテラシー)の醸成を行う学習ツールやシステムを開発し、本拠点の研究推進機構との連携の下、それを実践します。また、本拠点の研究室で創出された研究成果を実社会で実証する場の構築を、川崎市看護協会や川崎市立看護大学、総合川崎臨港病院の協力のもとで行います。
イノベーションが創出されても、それが今の制度や倫理感とそぐわないことが多々あります。本拠点プログラムで実施される研究の成果がスムーズに社会実装されるためには、それらを見越した制度改革と倫理的側面からの考察を識者とともに検討し、リフレクションペーパーとしてまとめておくことが必要となります。研究課題5では、社会科学的な観点からプログラム全体を俯瞰し、将来的に必要となるアイテムを国立医薬品食品衛生研究所など Transrational Research に経験豊富な機関と連携して準備する役割を担います。
公益財団法人 川崎市産業振興財団
ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)