看民工学コラム㉖ 看護に求められる「療養上の世話」とは?~「手術は成功しました」からの療養で決まるその後の人生~
日本の保健師助産師看護師法では、看護師の職務として「診療の補助」に加え、「療養上の世話」が定められています。「なぜ“世話”まで含まれるのか」と疑問に感じる方もいるかもしれません。確かに「世話」という言葉には誤解を招きやすい側面がありますが、ここでいう「療養上の世話」は、一般的な「生活の援助」を意味する「お世話」とは異なり、医療における専門的な看護実践の一つとして患者さんの回復を支える重要な役割を担っています。とりわけ、不安を抱える患者さんに安心感を提供することは、この「療養上の世話」の本質と言えましょう。例えば「清拭」は、清潔に保つために身体を拭いたり入浴を介助したりする行為ですが、それだけに留まりません。皮膚や関節の状態を観察し、血行を促進するマッサージ術の要素も含まれています。また「摂食介助」も同様に、単なる食事の「お世話」ではなく、嚥下機能の観察や、食が進まない原因の見極めを医療的視点から行います。この際、口腔内を清潔に保つオーラルケアは極めて重要であり、患者さんにできるだけ長く経口摂取を続けてほしいと願う看護師は少なくありません。
NHK連続テレビ小説「風、薫る」では、ナイチンゲールを師にもつ英国人が、看護学校で学ぶ主人公たちに「看護とは何か?」を自ら考えさせようとしています。シーツの皺ひとつから、室内の換気、身なりの清潔さや自身を伝染病から護ることの重要性まで、これからの時代、誰もが知っておいて欲しいと思いました。
医療ドラマなどで「手術は成功しました。もう大丈夫ですよ」という台詞を耳にすることがあります。しかし実際には、患者さんの人生を左右するのはその後の療養生活です。術後のケアの質は予後に大きく影響します。「術後早期離床」は回復を促すための重要なリハビリテーションですが、身体を動かすことに不安を感じる患者さんにどれだけ寄り添えるかによって、その効果は大きく変わります。看護師は患者の状態を的確に捉え、適切に対応する能力を訓練によって身につけています。その到達点の一つが「緩和ケア」です。これは身体的苦痛だけでなく、精神的苦痛にも向き合うものであり、必ずしも薬剤のみで解決できるものではありません。患者さんに安心をもたらす看護師の専門性が、最も発揮される領域といえるでしょう。
こうした看護師の専門性は、人の感情や温かさに根ざした部分が大きく、単純に機械へ置き換えることは容易ではありません。一方で、医療のDX化が進む中、看護師がPC作業に追われ、患者さんと向き合う時間が短縮傾向にあるのも事実です。プロジェクトCHANGEの皆様には、看護師が患者さんと接する時間を少しでも長く確保できるような仕組みづくりに、ぜひ力をお貸しいただければと思います。
佐藤久美子 社会医療法人財団 石心会 理事
法人看護人事部長