媒体の種類:学術論文
掲載紙/掲載誌/掲載メディア:Chemical Engineering Journal
著者:Y. Honda, D. Tokura, S. E. Muttaqien, K. Konarita, Y. Kawashima, N. Nishiyama and T. Nomoto
フェニルボロン酸系ポリマーは、標的細胞内に留まり細胞内で親水性から疎水性への変換を示す
要約:
多くの機能性ポリマーが薬物送達のために開発されてきた。しかし、標的細胞内での滞留性向上に焦点を当てた研究はごくわずかである。本稿では、親水性を疎水性に転換することで特定の細胞内に滞留可能なポリマーを構築する簡便な手法を報告する。この転換の鍵は、フェニルボロン酸基を有する側鎖にある。この側鎖は、細胞外環境と同様の生理的pHの水溶液中で混合するだけで、ボロネートエステルを形成することにより様々なポリオール分子を収容できる。このホウ酸エステル形成により、ポリマーは親水性を獲得すると同時に、共役ポリオール構造(具体的には3-ヒドロキシ-L-チロシン(L-DOPA))と細胞膜上の腫瘍関連アミノ酸輸送体との相互作用を増強した。ポリマー/L-DOPA複合体はエンドサイトーシスにより細胞内に取り込まれ、酸性エンドソーム/リソソーム環境でボロネートエステルが解離することで親水性から疎水性への転移が誘導された。これによりポリマーが凝集し、細胞内滞留時間が著しく延長した。我々は、L-DOPAで修飾されたポリマーが腹腔内腫瘍において腫瘍選択的な相互作用と滞留を示し、蛍光による経時的検出を可能にすることを発見した。ボロン酸化学は、標的部位での滞留性を向上させるためのポリマーベースの薬物送達システム構築に向けた独自のアプローチを提供するはずである。
https://doi.org/10.1016/j.cej.2025.171908