研究成果

学会

媒体の種類:学術論文
掲載紙/掲載誌/掲載メディア:Journal of Controlled Release

著者:N. Matsudaira, Y. Honda, H. Kinoh, X. Liu, S. Nagao, S. Matsutomo-Nitta, G. Haochen, H. Hayashita-Kinoh, M. Aizawa, K. Muguruma, Y. Miura, A. Shishido, T. Okada, N. Nishiyama

膠芽腫治療に向けたタンニン酸およびフェニルボロン酸ポリマーを搭載した腫瘍標的型アデノ随伴ウイルス複合体

アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターは、長期的なトランスジーン発現能力、優れた安全性プロファイル、低病原性により、遺伝子治療において最も有望なウイルスベクターの一つとして台頭し、膠芽腫(GBM)などの難治性癌の治療に応用されてきた。しかし、AAVを介した癌遺伝子治療は、腫瘍標的性の低さや既存抗体(Abs)による中和など、重大な障壁に直面している。本研究では、新規のGBM標的型AAVデリバリープラットフォームとして、環状RGD修飾三元複合体(cRGD-ternary complex)を開発した。この複合体は、AAV、タンニン酸、cRGD結合フェニルボロン酸ポリマーの自己集合により構築される。cRGDはGBM細胞に高発現するαvβ3/αvβ5インテグリンを標的とするリガンドとして機能する。in vitroでは、cRGD三元複合体はポリマーシェルにより中和抗体を効果的に回避し、高い遺伝子導入効率を維持した。同所性GBMマウスモデルにおいて、cRGD三元複合体の全身投与は腫瘍内での遺伝子導入を著しく増強し、24日間にわたり顕著な腫瘍抑制を達成した。さらに、cRGD三元複合体は、AAV単独投与の3倍の用量で同等の治療効果を示し、肝毒性は無視できる程度であった。このプラットフォームは、能動的腫瘍標的化、免疫回避、効率的な遺伝子導入を統合することに成功し、AAVの重大な限界を克服するとともに、GBM遺伝子治療における顕著な可能性を示している。

 

https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2025.114477

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