媒体の種類:学術論文
掲載紙/掲載誌/掲載メディア:Small
著者:M. Ohira, M. Kitamura, H. Iwasaki, H. Ohta-Okano, H. Tsujii, R. Nakamura, T. Nakazawa, A. Nishiguchi, M. Yamamoto, K. Osada, S. Toyooka, H. Cabral, A. Masamune, M. R. Kano and H. Y. Tanaka
DDR1を介したコラーゲンシグナル伝達は、膵臓がん線維化の3次元モデルにおいて高分子薬物送達を困難にさせる
要約:
線維化は膵管腺癌(PDAC)における薬物送達の重大な障壁であり、その予後不良に寄与している。膵星細胞(PSCs)はコラーゲンIなどの細胞外マトリックスタンパク質を過剰に分泌することで線維化を促進する。コラーゲンIはアルブミン、抗体、ナノ医薬品などの高分子物質の送達を物理的に阻害すると考えられている。構造的役割とは別に、コラーゲンはディスコイジン領域受容体(DDR)1/2などの特異的細胞表面受容体を介してシグナル伝達を行う。しかし、コラーゲンシグナル伝達が線維化障壁形成にどのように寄与するかは未解明である。本研究では、患者由来PSCから構築したPDAC線維化3次元培養モデルを用い、DDR1/2を介したコラーゲンシグナル伝達の寄与を評価した。DDR1/2阻害はPSCsにおけるコラーゲンI発現を減少させ、高分子物質の送達を促進した。さらに、MEK阻害剤はコラーゲンIをアップレギュレートすることで線維性バリアを悪化させたが、この効果はDDR1/2阻害により逆転した。アイソフォーム特異的標的化により、DDR2ではなくDDR1の阻害が有効であることが示された。DDRの下流では、特にMEAK7およびGIT1を伴う代替mTOR複合体を介したPI3K/AKT/mTOR経路の関与が実証された。総合的に、本結果はin vitroにおいてDDR1を介したコラーゲンシグナル伝達が線維化バリアを悪化させ、PDACにおける高分子薬物送達を促進する標的となり得ることを示している。
https://doi.org/10.1002/smll.202506926