研究成果

学会

媒体の種類:学術論文
掲載紙/掲載誌/掲載メディア:Nature Biomedical Engineering

著者:J. Li, K. Toh, P. Wen, X. Liu, A. Dirisala, H. Guo, J, F. R. Van Guyse, S. Abbasi, Y. Anraku, Y, Mochida, H. Kinoh, H. Cabral, M. Tanaka and K. Kataoka

立体的な安定性に依存しない透明マントが、難治性がんに対するナノ製剤の飢餓療法を可能にする

要約:

ナノ材料の高い界面エネルギーは、生物学的成分との非特異的相互作用を最小化するためのステルス性を必要とする特定のナノバイオ相互作用を制限している。立体反発に基づくエントロピー安定化(PEG化など)は、ステルス性ナノ材料設計の主流戦略として長年用いられてきたが、その本質的な柔軟性と動的変形・外力への感受性により、ステルス性能はしばしば中程度に留まる。本研究では、立体反発の最大化ではなくイオン対ネットワークを活用する新たなステルス性実現法について報告する。等モル比のポリカチオンとポリアニオンからなるモデル多イオン複合ナノ粒子を用い、構成多イオン間の架橋を臨界閾値以上に増加させることで、タンパク質吸着とマクロファージ取り込みを効果的に低減し、半減期100時間を超える持続的循環を可能とすることを実証した。これを基盤に、アスパラギン枯渇療法のための、半透性イオン対ネットワーク鞘で被覆されたアスパラギナーゼ搭載小胞型ナノリアクターを開発した。これらのナノリアクターの循環延伸により、アスパラギンの持続的な枯渇が可能となり、転移性乳がんおよび膵臓がんの治療成績が改善された。本知見は、全体的な協調性を備えた安定した分子間構造を精密に設計することで、治療薬送達用ナノ材料の薬物動態改善への新たな道を開くものである。

 

https://doi.org/10.1038/s41551-025-01534-1
 

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