媒体の種類:学術論文
                                
                                掲載紙/掲載誌/掲載メディア:Biomaterials
                            
                                著者:H. Beauseroy, S. Quader, X. Liu, C. Bonduelle, K. Kataoka and S. Lecommandoux
                                
                            
水溶性ROPISA由来ポリペプチド系ナノキャリア:大腸がんおよび乳がん動物モデルにおける形状依存性
要約:
ポリペプチドベースのナノキャリアは薬物送達分野の鍵となるが、その形態が性能に及ぼす影響は未だ十分に解明されていない。本研究では、蛍光性ワーム状ナノ粒子の合成に関する新規手法、すなわちγ-ベンジル-L-グルタミン酸-N-カルボン酸無水物(BLG-NCA)のワンステップ水系開環重合誘導自己組織化(ROPISA)を提示する。この製剤の比較有効性を評価するため、溶媒置換法により球状アナログを調製し、細胞内取り込みと生体内分布を直接評価できるようにした。腫瘍血管性と透過性が異なることが示されているCT26(大腸がん)および4T1(トリプルネガティブ乳がん)モデルを用いて、まず2次元培養および3次元スフェロイドにおける内部化を検討した。結果、両形態とも効率的に取り込まれ、CT26細胞では取り込み速度が速い一方、4T1細胞では蓄積量が高いことが示された。3次元スフェロイドでは、両ナノ粒子とも腫瘍様構造に浸透したが、4T1スフェロイドでは拡散速度は遅いものの最終蓄積量は高かった。生体内では、両モデル、特に4T1腫瘍において、持続的な循環と著しい腫瘍蓄積が確認された。これらの知見は、NCAのROPISAがポリペプチドナノキャリア合成のための堅牢なプラットフォームであることを示しており、これにより共有結合グラフト法またはその場封入法による薬物担持ナノ粒子の実現への道を開き、精密な薬物送達のためのナノ医療を推進するものである。
https://doi.org/10.1016/j.biomaterials.2025.123802