研究成果

学会

媒体の種類:学術論文
掲載紙/掲載誌/掲載メディア:Psychogeriatrics

著者:J. Wu, A. Igarashi, M. Takaoka, H. Kugai, H. Matsumoto and N. Yamamoto

仮想現実(VR)ベース認知症教育プログラムが高齢者認知症病棟の医療スタッフに及ぼす影響:事前事後比較研究

要約:

 

背景
認知症ケアにおいて効果的かつ包括的な支援を提供するには、多職種連携が不可欠である。日本では認知症病棟(WEDs)がチームケアを重視しているが、職員の研修不足が課題となっている。本研究では、認知症に対する意識向上とWEDs職員間の多職種連携促進を目的とした仮想現実(VR)ベースの研修プログラムを開発し、その総合的な有効性を評価した。

 

方法
WEDsスタッフからの意見を踏まえ、短編映像、仮想現実体験、ディスカッション、ミニ講義、ジレンマに基づく症例検討を組み込んだ多職種職場研修プログラムを設計した。認知症専門病院の6つのWEDsのスタッフがプログラムに参加した。プログラム前後のアンケート調査で、参加者の認知症患者に対する態度・共感度および多職種連携への認識を評価した。1か月後の追跡調査で、患者中心ケア実践の変化を評価した。
 

結果
計27名の職員(看護師10名、リハビリテーションスタッフ13名、研修医1名、放射線技師1名、看護助手1名、システム担当者1名)がプログラムを修了した。平均年齢は34.4歳(±10.9)、うち17名が女性であった。プログラム終了後、参加者の認知症の人への態度に有意な改善が認められた(事前評価 vs. 事後評価: 43.4 vs. 45.1、p=0.01)、共感(15.9 vs. 16.8、p=0.01)、および多職種連携の認識(14.2 vs. 15.3、p=0.005)において有意な改善が認められた。追跡調査に回答した14名の参加者では、人中心ケア実践に有意な変化は認められなかった(28.1 vs. 28.4、p=0.61)。

 

結論
バーチャルリアリティを用いた認知症教育プログラムは、WEDsスタッフの態度、共感、多職種連携への認識を改善し、革新的な教育ツールとしての可能性を示唆した。より大規模かつ多様なサンプルを用いた今後の研究により、その広範な適用可能性と長期的な行動への影響を検証することが求められる。

 

https://doi.org/10.1111/psyg.70099

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