媒体の種類:学術論文
掲載紙/掲載誌/掲載メディア:Nature Communications
著者:T. M. Loo, X. Zhou, Y. Tanaka, S. Sugawara, S. Yamauchi, H. Kawasaki, Y. Matsuoka, Y. Sugiura, S. Sakuma, Y. Yamanishi, S. Yotsumoto, K. Dodo, Y. Shirasaki, T. Kamatani and A. Takahashi
老化に伴うリソソームの機能不全が、シスチン欠乏による脂質の過酸化とフェロトーシスを阻害する
要約:
不可逆的な細胞周期の停止と炎症因子の分泌を特徴とする老化細胞は、加齢に関連した様々な病態を促進する。老化細胞は、鉄依存性の細胞死であるフェロトーシスに対して抵抗性を示すが、その基礎となるメカニズムは不明である。我々は、シスチン欠乏による脂質過酸化とフェロトーシス誘導には、リソソームの酸性度が重要であることを見出した。老化細胞では、リソソームのアルカリ化が第一鉄のリソソームへの異常な滞留を引き起こし、その結果、フェロトーシスに対する抵抗性が生じる。V-ATPase活性化剤EN6で処理すると、老化細胞ではリソソームの酸性度が回復し、フェロトーシス感受性が回復した。リソソームのアルカリ化が関与する同様のフェロトーシス抵抗性メカニズムが、膵臓癌細胞株でも観察された。EN6投与は、異種移植およびKras変異マウスモデルにおいて、膵臓癌の発生を阻止した。この知見は、ライソゾーム機能不全とフェロトーシス制御の関連を明らかにし、加齢関連疾患の治療戦略を示唆するものである。
https://doi.org/10.1038/s41467-025-61894-9