媒体の種類:学術論文
掲載紙/掲載誌/掲載メディア:Biomaterials
著者:Nan Qiao, Mao Hori, Mitsuru Naito, Heemin Chang, Satomi Ogura, Mika Suzuki, Tsuyoshi Kimura, Shigeto Fukushima, Hyun Jin Kim, Satoshi Uchida and Kanjiro Miyata
mRNAポリプレックスワクチンにおけるポリカチオン部の疎水性を高めると、液性免疫と細胞性免疫の誘導効果が高まる
ポリカチオンベースのmRNA送達系、いわゆるポリプレックスは、mRNAワクチンや治療薬において大きな可能性を秘めています。しかし、感染症ワクチンにおいては、液性免疫と細胞性免疫の両方を誘導する必要があるため、その性能は必ずしも最適だとは言えませんでした。本研究では、生分解性の両親媒性ポリアスパラギン酸アミド誘導体をプラットフォームとして用い、ポリカチオンの疎水性を最適化し、液性および細胞性免疫の誘導効率を最大化しました。ポリマーの側鎖には、カチオン性のジエチレントリアミン(DET)と疎水性の2-シクロヘキシルエチル(CHE)部分が異なる比率で含まれています。CHE導入比率を増加させることで、NLRP3インフラマソーム経路を活性化し、免疫刺激性のアジュバント効果が向上し、培養した樹状細胞の活性化がより効率的に行われました。マウスへの皮下注射後、CHE導入比率が高いポリプレックスは、排出リンパ節でのタンパク質発現効率を改善し、強力な胚中心応答を誘導しました。その結果、モデル抗原およびSARS-CoV-2スパイクタンパク質を標的としたワクチン接種において、抗体応答がCHE導入比率の増加に伴い強化されました。さらに、このワクチン接種は、Th1偏向の形でCD8陽性およびCD4陽性T細胞を引き起こしました。分布分析では、デリバリーされたmRNAからのタンパク質発現が注射部位および排出リンパ節に局在し、全身分布に関連する安全性の懸念を回避しました。総じて、この研究は、ポリアスパラギン酸アミド誘導体に疎水性部分を導入することが、感染症を標的としたポリプレックスベースのmRNAワクチンの効果を高めるための効果的かつ安全な戦略であることを示しています。
https://doi.org/10.1016/j.biomaterials.2025.123515