媒体の種類:学術論文
掲載紙/掲載誌/掲載メディア:Journal of Controlled Release
著者:Ken Kawaguchi, Le Bui Thao Nguyen, Mao Kinoshita, Naoko Abe, Makoto Oba, Hiroshi Abe, Kazuki Sudo, Keita Inoue, Satoshi Uchida and Teiji Sawa
高純度mRNAワクチンは、I型インターフェロン反応を最小限に抑えることで、緑膿菌に対する強固な免疫を提供する
要約:
薬剤耐性菌(AMR)の脅威が高まる中、細菌に対する効果的なワクチンの開発は重要です。本研究では、AMRの代表的なな病原体である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa、P. aeruginosa)を標的としたmRNAワクチンを、脂質ナノ粒子(LNPs)に封入されたPureCap mRNAを用いて開発しました。PureCap技術は、キャップのないmRNAや二本鎖RNA(dsRNA)など、in vitroで転写されたmRNAから免疫刺激不純物を除去する簡便な方法を提供します。モデル抗原をコードするmRNAを用いてマウスに筋肉内接種を行ったところ、PureCap mRNAは従来のARCAキャップmRNAによって誘導された抗体価の26倍に達しました。メカニズム解析の結果、ARCAキャップmRNAに含まれるキャップのないRNAとdsRNAの不純物が、低下した体液性免疫応答の原因であることが明らかになりました。PureCap mRNAは、ARCAキャップmRNAと比較してタンパク質発現効率を向上させ、炎症誘発応答を低下させましたが、特に炎症誘発応答の最小化が重要でした。抗インターフェロン-α/β受容体抗体を投与すると、ARCAキャップmRNAワクチン接種に対する抗体応答がPureCap mRNAワクチン接種と同等のレベルに回復し、ARCAキャップmRNA接種後の抗体応答に対するタイプIインターフェロン応答の悪影響が強調されました。P. aeruginosaのPcrVタンパク質を標的としたワクチン接種では、PureCap mRNAがARCAキャップmRNAではなく、細菌挑戦後のマウスの生存期間を有意に延長しました。これは、抗体産生の向上によるものと考えられます。さらに、PureCap mRNAワクチン接種は肺内の細菌量を有意に減少させ、組織損傷、浮腫、炎症応答を軽減しました。これらの結果は、AMRに対抗するための貴重な戦略を提供する細菌ワクチンの有望なプラットフォームとしてのPureCap mRNAの可能性を強調しています。
https://doi.org/10.1016/j.jconrel.2025.113860