研究成果

学会

媒体の種類:学術論文
掲載紙/掲載誌/掲載メディア:Journal of Photopolymer Science and Technology

著者:Yukihiro Kanda, Hiromi Kuramochi, Hiroaki Takehara and Takanori Ichiki

PLLA/PEDOT:PSS導電性ポリマーアロイフィルムの作製に溶媒が与える影響

生分解性ポリマーと導電性ポリマーを複合することで、単一の材料では実現の難しい、双方の特性を有する優れたポリマーアロイを開発する研究が注目されている。生体適合性を有する導電性ポリマーのpoly(3,4-ethylenedioxythiophene) (PEDOT)にポリスチレンスルホン酸(PSS)をドーピングしたPEDOT:PSSは、その電気化学的、熱的、酸化安定性から、応用・実用化に向けて盛んに研究されている。本研究では、PEDOT:PSSと生分解性ポリマーであるポリL乳酸(PLLA)のポリマーアロイフィルムの作製過程について検討した。PLLAを1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール(HFIP)もしくはジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した後、PEDOT:PSS水分散液と混合して作製した非相溶性ポリマーブレンドの混和性について、ハンセン溶解度パラメータ(HSP)に基づいて検討した。HFIPと水の混合溶媒では、作製したフィルム中に直径数10 μm程度の粒状のPEDOT:PSS凝集体が点在しており、離散的な相領域が形成された。DMSOと水の混合溶媒を用いたフィルムでは、顕微観察レベルでPLLA相とPEDOT:PSS相の良好な分散が観察された。HSPを用いた熱力学的な数値シミュレーションにより実験結果を説明し、溶媒の蒸発に伴う溶解性の変化がポリマーの析出に与える影響を議論した。2種のポリマーに対する溶解性が近しい溶媒を選択することで、各成分ポリマー相の分散性が良好な薄膜を形成できることを実証した。

http://doi.org/10.2494/photopolymer.37.239

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